フロスや歯間ブラシは歯磨きの前?後?

今回は「フロスや歯間ブラシは歯磨きの前と後どっちがいいの」という疑問について解説します。

歯科医師や歯科衛生士に聞いても、「どっちでもいいよ。」や、「汚れが取れていればいい。」など様々な意見が聞かれます

今回はこの疑問を解決すべく論文を元に解説します。

結論:フロスや歯間ブラシが先 歯磨きが後

最初に結論から言うと、フロスや歯間ブラシが先の方が良いと言われています。

その理由としては2つあります。

どうしてフロスや歯間ブラシを先にする方がいいの?

フロスや歯間ブラシが先の理由
  1. 歯と歯の間の汚れがしっかりとれる
  2. 歯磨き後のフッ素が多く残る

1.歯と歯の間の汚れがしっかりとれる

歯と歯の間に残った汚れは歯ブラシだけでは落としにくい言われています。歯間ブラシやフロスを使うと歯と歯の間のプラーク(細菌の塊)や食べカスが歯間部から外に出てきます。しかし、歯と歯の間から出されてもプラークや粘着性の食べカスはその場にとどまります。そのとどまった汚れを歯ブラシを使うことで取り除くことができます。

そのためフロスや歯間ブラシを先にして歯磨きを後にすると、より多くのプラーク(細菌の塊)や食べカスを歯から取り除き、歯周病の予防や歯と歯の間の虫歯予防に繋がります。

2.歯磨き後のフッ素が多く残る

フッ素入りの歯磨剤を使って歯磨きをする場合、フロスの後に歯磨きをすると、「フロス→歯磨き→うがい」となるのに対し、歯磨きの後フロスをする場合は、「歯磨き→うがい→フロス」となり、うがいで少しフッ素が減少したところにさらにフロスをすることによって歯磨剤中に含まれるフッ素が取り除かれ、むし歯予防効果が薄れます。フロス後にうがいをする場合はさらにフッ素が取り除かれる可能性があります。

もし、歯磨き→うがい→フロスを行った場合は、就寝前にジェルタイプの歯磨剤等でフッ素塗布を追加で行うと予防効果が高まります。

根拠になる文献

今回の説明の根拠になる文献1)の詳細を紹介します。

この研究は2018年にアメリカの歯周病学会誌(Journal of Periodontology. Impact factor:4.494)に掲載された文献です。

25人の歯科学生を対象にしたランダム化比較臨床試験で、歯ブラシ後フロスをするのとフロス後歯ブラシをする場合で、以下の2点を比較しています。

  • どちらの方が歯の汚れ(デンタルプラーク)が取れているのか
  • 歯磨き粉に含まれるフッ素が歯と歯の間にどれくらい残っているか

結果1

結果として、フロス→歯ブラシのグループの方が、歯ブラシ→フロスのグループよりもプラークの残っている割合が少ないことが分かりました。

プラーク除去前とプラーク除去後の全体、歯間部、歯頚部のプラークの割合の比較 文献1)の図4を編集

結果2

歯と歯の間に残っているフッ素の濃度はフロス→歯ブラシのグループの方が多いことがわかりました。

歯間部のフッ素濃度の比較 文献1)の図5を編集

結果3

全体のプラーク減少割合、歯と歯の間のプラークの減少割合、歯と歯の間のフッ素濃度の増加には有意な差(統計的に意味のある差)があることがわかりました。

フロス→
歯ブラシ
歯ブラシ
→フロス
P値
(有意差)
全体の
プラーク減少割合
0.420.350.001
有意差あり
歯と歯の間の
プラーク減少割合
0.610.390.009
有意差あり
歯と歯ぐきの間の
プラーク減少割合
0.610.590.2
有意差なし
歯と歯の間の
フッ素濃度の増加(ppm)
254.94130.710.027
有意差あり
文献1)のテーブル1を編集

結論

ブラッシング前にフロスをするグループは、ブラッシング後にフロスをするグループと比較して、有意に歯間部のプラークは減少し歯間部のフッ素濃度は高い値を示しました。

フロスを先にする他のメリットとは?

今回はフロスが先か歯磨きが先かについて文献をもとに解説しましたが、大切なことは忘れずフロスや歯間ブラシをすることです。

フロスを先にすると歯ブラシあとに感じるフロスに対する面倒臭さがなくなります。逆にフロスをしたから今日は歯ブラシしなくてもいいかとはなりにくいので、フロスを先にするのは習慣化させる意味でも効果は高いと感じました。

自分に合ったフロスや歯間ブラシが分からない方は歯科医院で検診を受けて、歯科衛生士に自分に合った清掃補助器具を聞きましょう。

参考文献

1)Mazhari F, Boskabady M, Moeintaghavi A, Habibi A. The effect of toothbrushing and flossing sequence on interdental plaque reduction and fluoride retention: A randomized controlled clinical trial. J Periodontol. 2018 Jul;89(7):824-832. doi: 10.1002/JPER.17-0149. Epub 2018 Jul 20. PMID: 29741239.

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